1. はじめに
10月1日に消費税率が10%に引き上げられてから、早くも3カ月近くが経ちました。今回の増税に伴い、増税負担軽減の目的から「軽減税率制度」と「キャッシュレス・ポイント還元事業」も同時に開始されました。これによって「何を買うのか(軽減税率の対象商品か否か)」「どこで買うのか(キャッシュレス・ポイント還元事業の対象店舗か否か)」「何を使って支払うか(現金orキャッシュレス決済)」により①軽減税率の対象か、②ポイント還元の対象か、③それとも両者の組み合わせなのかなど、実質的な税負担率のパターンがいくつか考えられるようになりました。今回は「軽減税率制度」と「キャッシュレス・ポイント還元事業」の概要、そして実際にどのような負担税率のパターンが考えられるのか、順に見ていきたいと思います。
2. 軽減税率制度
軽減税率制度とは、消費税率10%への引上げに対し、低所得者への配慮の観点から、一定の生活必需品、即ち「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」を対象に、軽減税率8%を適用する制度をいいます(詳細は、コラム2018.07.20を参照)。
3. キャッシュレス・ポイント還元事業
キャッシュレス・ポイント還元事業とは、消費税率引上げに対する需要平準化及び国内キャッシュレス化の加速を目的として、2019年10月1日から2020年6月30日の9カ月間に限り、登録している対象店舗にて、対象キャッシュレス手段を利用して買い物することで、最大5%のポイントの付与、又は店頭での値引きがなされるシステムをいいます。
①キャッシュレス・ポイント還元対象店舗
ポイント還元制度に登録している中小・小規模店舗が対象となり、大手量販店などの大企業は、ポイント還元の対象にはなりません。またフランチャイズチェーン傘下の中小・小規模店舗では2%の還元となります。対象店舗には、経済産業省から統一されたマークが記載されたポスターやステッカーが配布され、店頭に掲示されます。また経済産業省のホームページやアプリにて対象店舗の検索が可能となっています。
対象店舗のマーク
②キャッシュレス・ポイント還元対象手段
キャッシュレス手段としては、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、プリペイドカード、QRコード、モバイル決済などがありますが、店舗によって、対象となるキャッシュレス手段が異なること、また多くの場合、決済事業者によって還元上限が設定されていることに留意が必要です。保有するキャッシュレス手段が対象となるか否かは、決済事業者へ問い合わせるか、経済産業省のホームページにて確認できます。また、当該ホームページでは主要なキャッシュレス決済サービスの紹介も行っています。
4. 実際の負担税率
では上記2つの税負担軽減の制度が存在している現在、実質的にどのような負担税率のパターンがあるのでしょうか。以下に表にまとめてみました。
実際の負担税額
上に示す通り、キャッシュレス決済を利用することで、増税前の消費税率8%よりも実質的な負担税率が軽減されるパターンがあることがわかります。
5. おわりに
10月1日の消費税率引上げと同時に、軽減税率制度とキャッシュレス・ポイント還元事業といった税負担軽減の制度もスタートし、消費者の立場からは実際に負担している税率が把握しづらい状況にあると思います。今回はその点に注目し、今一度、「軽減税率制度」と「キャッシュレス・ポイント還元事業」についてポイント整理し、結果としてどのような税負担のパターンがあるのかみてみました。キャッシュレス・ポイント還元事業は2020年6月末までの期間限定の制度ですが、利用することで実質的な負担税率が増税前よりも小さくなるケースがみられます。この機会に現金支払からキャッシュレス決済への切り替えを検討する場合など、制度理解の際に役立てて頂ければ幸いです。