太陽光事業について

1.はじめに

近年地球環境の悪化が問題視され、再生可能エネルギー事業の一環として、太陽光事業は国策として、これまで様々な減税措置が行われてきました。この太陽光事業を上手に活用することにより、法人安定収入の確保と節税メリットを享受することができます。そこで今回は太陽光事業の概要と、法人が太陽光設備を導入したときのメリット、デメリットなどについて説明したいと思います。

2.太陽光売電の仕組み

太陽光設備は家庭用(住宅用)と産業用(業務用)があります。ここでは法人の方向けに産業用の太陽光設備について説明いたします。
 まず太陽光設備は売電の固定価格買取制度があります。この売電制度は、発電した電力を東京電力などの電力会社が買い取ってくれる制度になります。買取期間については、住宅用の太陽光発電は10年、産業用の太陽光発電は20年です。その期間は発電した全量の買取になります。売電価格は、太陽光設備の導入時の契約上の価格が継続されることになりますが、この価格は経済産業省が定めており、毎年引き下げられております。なお、2016年は1Kwあたり税抜24円です。

3.太陽光設備投資のメリット

投資として収益を得られることはもちろんですが、産業用太陽光設備投資を行うことによって節税を行うことができます。ここで投資として収益が得られる仕組みと節税の仕組みにて説明したいと思います。

①投資としての収益の仕組み
 太陽光事業の投資利回りですが、設置場所やパネルの容量などにより異なりますが、表面利回りとして、通常10%を超えます。ランニング費用として、設備のメンテナンス費用、損害保険料、土地の賃借料(土地を賃借する場合)などが発生いたしますが、実質利回りとして、8%以上のものが多いです。
 また、前述した固定価格買取制度により、産業用の場合20年間の売電が確定しているため、安定した収入を得られることが可能です。
 収益モデルとしては、不動産投資と似ておりますが、不動産投資よりは利回りは高水準です。また、不動産投資であれば、空室が出る場合や入居者との人的トラブルなどがリスクとして考えられますが、太陽光事業はこのようなリスクはありません。デメリットについては、後述しますが、太陽光事業は魅力的な投資と言えます。

②節税の仕組み
 まず、前提として生産性向上設備投資促進税制を適用することになります。この制度は言葉通り生産性を向上させる設備に投資する際に税制を優遇する制度です。29年3月までに太陽光設備を取得すれば、設備取得額(産業用太陽光発電取得にかかった費用)の50%を特別償却または4%の税額控除の税制優遇を受けることができます。
この制度を適用する要件としては以下のとおりになります。

  • ・太陽光発電設備の金額が160万円以上
  • ・投資利益率15%以上(中小事業者等にあたっては5%以上)となる計画書
    ※事前に経済産業省の許可が必要
  • ・平成29年3月31日までに、太陽光発電設備を購入し、設置及び事業化
  • ・国内への投資
  • ・中古や貸付ではない
  • ・青色申告をしている法人・個人

この制度を適用することにより、取得価格の50%を特別償却ができるため、利益を圧縮することが可能です。翌年度からは特別償却後の帳簿価格を17年にわたり定率法により普通償却することになります。
 なお、この生産性向上投資促進税制については、時限的な優遇税制であり、平成29年3月31日で終了いたしますので、それ以降の取得に関しては適用することができない点で注意が必要です。

4.太陽光設備投資のデメリット

①日照時間 
 リスクとして一番に挙げられるのが日照時間低下のリスクです。20年間という長期間にわたって収益のシミュレーションを行った上で投資物件を判断しますが、天候次第では、利回りが悪くなってしまいます。

②経年劣化 
 太陽光発電パネルは、設置してから時間が経つにつれ、劣化し発電量が落ちます。この経年劣化は、屋外に設置するからには避けられないもので、どのメーカーの太陽光パネルでも表れる現象です。年に0.3~1%の劣化ですが、設置場所の環境によって違いが生じます。ここ点も踏まえたシミュレートをすることが重要になります。

③融資が受けにくい 
 太陽光設備を導入するには当然初期費用がかかってきます。20年間に及ぶ全量買取制度によって長期的な収入が見込めることから、融資元に提出する事業計画書はしっかりしております。ただし、それだけでは融資を受ける事はできません。充分な担保も用意しなければなりません。しかし、太陽光発電を設置予定の土地は担保価値が期待できない場合が多く、上物の太陽光発電設備も担保価値がないため、不動産ローンのように物件を抵当権設定し、融資を受けることができません。不動産投資と比較すると融資が受けにくいという点がデメリットです。

4.おわりに

最後にここまで太陽光設備発電についての仕組みをご説明しました。太陽光事業はメリットも多くありますが、安易に購入を決断せず、太陽光事業の仕組みやリスクを充分に理解したうえで検討する必要があります。また太陽光発電は設置したら終わりではありません。そのため、メーカー選びはもちろん大切ですが、設計や施工にあたっての提案力・技術力がしっかりしている販売・施工会社選びが極めて重要なのです。一度設置すると20年にわたり使い続けるものですから、長いお付き合いのできる信頼できる業者を選ぶことも大切です。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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