マイナンバー制度について②

 

1.はじめに

前回は、マイナンバー制度の概要および、マイナンバー制度が導入された場合の企業に対する影響についてご説明しました。
マイナンバーは、住民票を持つ国民一人ひとりに付与されることから、従業員を雇う企業の人事部がその収集や管理業務を任されることになるかと思います。
しかし、収集や管理業務は従業員の理解や社内での徹底がなくては行うことはできません。
制度が開始されてからの業務を少しでも減らすためにも、今回は人事部への影響についてご説明いたします。

2.マイナンバーの管理について

マイナンバーは、事前に明示してある目的とは別の目的で利用すること、情報を漏洩することについて「4年以下の懲役、または200万円以下の罰金」が科せられます。
そのため、正しいマイナンバーの取扱いをはじめ社内でのルール策定など、厳格な管理体制を構築しながら運用する必要があります。
また、これらは実際に管理をする担当者だけではなく、各従業員にも運用ルールを認識・実行してもらわなくてはなりません。
マイナンバーを厳格に管理することの重要性や具体的な管理方法については、制度が開始される前に全従業員へ分かりやすく説明し、理解をしてもらうことが重要になるでしょう。
特に人事部では、制度開始時または従業員の入社時のマイナンバーの収集をはじめ、対面にて本人からマイナンバーを収集できなかった場合の本人確認や退社に伴うマイナンバーの破棄など、事務作業の増加が想定されています。
マイナンバー制度が開始されてから、担当者の教育や制度に対する従業員の理解を深めようとするのでは、事務負担がさらに増えてしまうことが考えられますので、事前に対策を検討しておく必要があります。
なお、マイナンバーの収集範囲としては従業員だけではなく、従業員の扶養親族、パートやアルバイト、および業務委託等をしている個人事業主からもマイナンバーを収集する必要があります。
特にパートやアルバイト、個人事業主に関しては、一回限りの利用になることも考えられるため管理が煩雑になるかと思いますが、一回限りの利用だからといって収集せずにいるとむしろ手続きが煩雑になってしまう可能性がありますので、業務フローや管理体制の構築が必要となるでしょう。

3.業務上の留意点等

マイナンバーを厳重に管理するためには、外部からの漏洩だけではなく、内部からの漏洩も防ぐための管理が要求されます。
具体的な管理方法について以下の点等について検討する必要があります。
(1)マイナンバーに関する情報を、担当者や特定の従業員のみがアクセスできるように権限を付与する。
(2)取得・利用・破棄等の記録を残す。
(3)マイナンバーの記載された資料専用の保管金庫を用意する。
(4)外部からのウイルス感染を防ぐため、セキュリティを強化する。
マイナンバーを管理しているデータ資料等の保管の際にも特定の人間しか閲覧できないようなシステムを導入することが求められます。
また、取得・利用・破棄等の記録を残すことで、社内での管理に対する意識を高め、監視機能を働かせることが望まれます。

また、業務上は以下の点等について留意する必要があります。
(1)マイナンバーを取り扱う際は権限を持たない者の目に触れないように注意する。
(2)メールなど、データ上の記録に残ってしまうような連絡手段は避けるようにする。
(3)マイナンバーの収集時に利用目的を明示し、目的外の利用はしないよう管理する。
(4)番号確認およびなりすまし防止のため、本人確認を確実にする。
マイナンバーが記載された資料等を誰でも見ることができる場所に保管することは認められず、いわゆる「のぞき見」ができないような環境づくりも必要なります。
使用する際にはパーテーションで囲われた場所で使用するなどの管理体制が必要なります。
また、従業員の退職等で利用目的がなくなったマイナンバーを保有し続けることは「目的外の保管」に該当するため注意が必要です。
利用目的がなくなった場合には破棄することとなりますので、いつまでに破棄すべきかを把握できるよう管理することが望まれます。

実際に制度が開始されると様々な問題が発生すると考えられますので、事前に業務フローの確立や各従業員の理解を得ておき、どのような問題が発生しても即座に対応できるよう、常に管理は厳格にしておくこと、また最終責任者から各従業員まで認識を徹底することが重要になります。

4.おわりに

今回は、マイナンバー制度導入による人事部への影響についてご説明をしました。
制度の開始前に人事部の担当者の教育はもちろん、従業員へのマイナンバー制度に対する理解を図ることや、漏洩を防ぐための管理方法等を徹底していかなくてはなりません。
これらを怠り、もし漏洩してしまった場合には法的に罰せられてしまいますので、企業の信用のためにも必要不可欠となります。
今回の話は人事部をメインにご説明をしましたが、次回は「マイナンバー制度導入による管理部・経理部への影響」について検討します。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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