平成28年度税制改正について①

1.はじめに

平成28年度税制改正法案が今年の3月29日に可決、成立され、4月1日より施行されました。
今回の税制改正の目玉としては、報道でも多く取り上げられていた「消費税の軽減税率」ですが(消費税の軽減税率については前回までのコラムを参照してください。)、他にも日本の経済状況への対応策とした制度改革が多く見られます。
全3回にわたり、平成28年度税制改正における主な改正点の趣旨及び内容についてご説明いたします。
第1回目の今回は、法人税法に関する改正の中でも主要な論点についてです。

2.成長志向の法人税改革に関わる改正論点

法人税法に関する改正は、昨年の改正に引き続き、一貫して「成長志向の法人税改革」の立場をとっています。
この「成長志向の法人税改革」という言葉を耳にすることがあるかと思いますが、これは課税ベースを拡大しつつ法人税率を引き下げることで、より広く負担を分かち合い、稼ぐ力のある企業等の税負担を軽減し、企業の収益力を高めることを目的とした改革です。
この趣旨に基づいて行われた改正論点が主に以下の3点です。

(1)法人税率の引下げ
法人税率の引下げは以下のように、今年度は23.4%に引き下げられ、平成30年度には23.2%まで引き下げられる予定です。

H27/4/1 – H28/3/31 H28/4/1 – H30/3/31 H30/4/1 – H31/3/31
法人税率 23.9% 23.4% 23.2%
法人事業税所得割 6.0% 3.6% 3.6%
法人実効税率 32.11% 29.97% 29.74%

(2)減価償却の見直し

建物と一体的に整備される建物付属設備や、建物と同様に長期で安定的に使用される構築物の償却方法について、定額法に一本化されました。

改正前 改正後
建物 定額法 定額法
建物付属設備・構築物 定額法 又は 定率法  定額法 
機械装置・器具備品等 定額法 又は 定率法 定額法 又は 定率法

(3)租税特別措置法の見直し

①生産性向上設備促進税制

生産性向上設備促進税制とは、生産性を向上させると認められた一定の固定資産を企業が導入した場合、その固定資産の減価償却等において課税上メリットのある優遇制度です。
この制度は来年度より廃止される予定のため、今年度は経過措置として以下のように内容が縮小されました。

H27/4/1 – H28/3/31 H28/4/1 – H29/3/31 H29/4/1以降
機械装置等 即時償却又は5%税額控除  50%特別償却又は4%税額控除  廃止
建物・構築物 即時償却又は3%税額控除  25%特別償却又は2%税額控除  廃止

②環境関連投資促進税制
環境関連投資促進税制は、企業が新品の環境負荷低減推進設備等の取得をし、1年以内に事業に供した場合、その固定資産の減価償却等において課税上メリットのある優遇制度です。
今回の改正では、その取得との期限が平成30年3月31日まで2年間延長された上、当制度の対象となる資産について次の見直しが行われました。

・風力発電設備についての即時償却が廃止される
・対象資産から売電用の太陽光発電設備が除外される(自家用のみ対象となる)
・対象資産から車両運搬具が除外される(電気自動車等)

③雇用促進税制
雇用促進税制は、一定の要件を満たす場合に、雇用者の増加1人当たり40万円の法人税の税額控除をすることができる制度です。
この制度を適用できる要件について、①有効求人倍率が全国平均の2/3以下の地域に限定されること、②雇用形態が正社員に限定されること、の2点が追加され、優遇の範囲が縮小されました。

3.地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

地方公共団体が行う地方創生事業を国が認定する枠組み(地域再生法)の下で、認定事業に対する寄附金額の一部を税額控除する制度が導入されます。
この制度ですが、地方への寄附を通じて民間資金が地方に流れること及び地方公共団体の政策面の向上が期待されています。
企業版ふるさと納税の税負担の軽減の仕組みを表したものが下記の表になります。

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企業が地方公共団体に寄附する場合には、その全額が損金算入されるため、寄附金の額の約3割(法人実効税率)相当額の税額の軽減効果があります。
今回の改正により、さらに色付きの部分の税額控除が加わり、企業負担分が改正前後で約7割から約4割へと軽減されることになります。
この制度の適用条件としては、①一回当たりの寄附金の額が10万円以上であること、②自社の本社が所在する地方公共団体以外の団体への寄附であること、③その寄附により代償として経済的な利益を受けることがないこと等があり、寄附を行う際には諸条件を確認する必要があります。

4.おわりに

今回は法人税法に関する主な改正点についてご説明いたしました。
企業版ふるさと納税をはじめとする優遇税制については、要件を確認し検討していく必要があります。
また、生産性向上設備促進税制のように優遇範囲が縮小される改正点については、改正内容及び適用期間を把握しておく必要があります。
次回は、個人所得課税・資産課税に関する主な改正点についてご説明いたします。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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