
1.はじめに
前回は、平成28年度税制改正における法人税法に関する主要な改正点についてご説明いたしました。
第2回目の今回は、個人所得課税・資産課税に係る主要な改正点についてご説明いたします。
2.少子高齢化・女性活躍の推進・教育再生等に向けた個人所得課税改革
近年の個人所得課税に係る改正は、日本社会及び日本経済の構造変化の中で生じた諸問題への取組みの一環として行われています。
中でも問題視されている少子高齢化問題については、若年層及び低所得層の生活基盤を確保することが重要課題であると考えられており、この二つの層を支援する税制改革が行われています。
この趣旨に基づき盛り込まれた改正点のうち、主要な項目である「三世代同居改修工事等に係る所得税額控除の特例」についてご説明いたします。
住宅の三世代同居改修工事等に係る所得税額控除の特例
この制度は世代間の助け合いによる子育てを支援する観点から創設されました。
以下の要件を満たす三世代同居に対応した改修工事を行った場合に、一定期間内において所得税額を控除することができます。
対象工事 | ①キッチン ②浴室 ③トイレ ④玄関 |
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対象工事要件 |
|
対象期間 | 平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住用に供した場合 |
以上の要件を満たす工事が該当しますが、(1)借入金で行った場合と(2)自己資金で行った場合とで適用できる特例が異なります。
(1)ローン型の税額控除の特例
三世代同居改修工事等を含む増築工事を住宅借入金等で行った場合、その工事に対応する 住宅ローン年末残高の一定の割合を所得税額から5年間控除 することができます。
増築工事全体の部分とそのうち三世代同居改修工事に対応した部分で取扱いが異なります。具体的な内容は以下のものになります。
増築工事全体 | 左記のうち三世代同居 改修部分に対応する工事 |
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住宅ローンの 年末残高 |
~1,000万円 (右記金額を含む) |
~250万円 |
控除率 | 1.0% | 2.0% |
最大税額控除額 | 62.5万円(5年分) (右記金額を含む) |
25万円(5年分) |
※A=三世代同居改修部分の住宅ローンの年末残高
B=増改築した際に借り入れた住宅ローンの年末残高 とすると
税額控除額は、 A×2.0%+(A-B)×1.0% で計算することができます。
上記図表内の最大税額控除額は、この計算式に基づき計算したものです。
〈計算過程〉
①250万円×2.0%+(1,000万円-250万円)×1.0%=12.5万円 …1年分の控除額
②12.5万円×5年=62.5万円 …5年分の控除額
(2)リフォーム投資型の税額控除の特例
三世代同居改修工事等を自己資金で行った場合、その工事の標準的と認められる 工事費の10%相当額を、その工事を行った年の所得税額から控除 することができます。
ただし、その年度の合計所得金額が3,000万円を超える場合には適用することができません。具体的な内容は以下のものになります。
対象となる工事費用の限度額 | 250万円 |
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控除率 | 10% |
最大税額控除額 | 25万円 |
3.空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
近年、空き家が増加しており、この空き家の発生の多くは相続によるものだと考えられています。
管理されていない状態で空き家が放置されると、建物の倒壊や火災等の危険、衛生上や景観上の問題など、様々な問題が生じます。
この問題へ対処するため、管理されていない空き家の売却を促進する観点から、空き家の売却時の所得税軽減措置が新しく創設されました。
具体的には、被相続人の居住用に供していた家屋又は土地を相続した相続人が、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に、その家屋又は土地を売却した場合において、その売却時の 譲渡益から3,000万円を控除 することができるようになりました。
4.セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)の創設
適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、検診等又は予防接種を受けている個人を対象に、スイッチOTC薬(薬局・ドラッグストアで購入する医薬品)の購入費用が所得控除の対象となる医療費控除制度が新たに創設されました。
現行の医療費控除制度との併用は認められず、どちらか一方を選択 することとなります。
具体的な内容は以下のものになります。
対象者 | 自己、自己と生計を一にする配偶者その他の親族。 |
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要件 | 上記の者で、以下のいずれかの検診または予防接種を受けていること。 ①特定健康診査(メタボ検診) ②予防接種 ③定期健康診断 ④健康診査 ⑤がん検診 |
適用時期 | 平成29年1月1日~平成33年12月31日までの各年 |
控除対象 | スイッチOTC医薬品の購入対価 |
控除金額の計算 | 控除対象医薬品の合計額-①-② ※①保険金などで補てんされる金額 ②12,000円 |
所得控除限度額 | 88,000円 |
5.おわりに
今回は個人所得課税・資産課税に係る主な改正点についてご説明いたしました。
個人所得課税についての改正点ですが、適用期間が限られた特例措置が多く見られました。
所得税を下げるためにも、活用できるものがあるかをぜひ検討していただければと思います。
次回は納税環境の整備に関する主な改正点についてご説明いたします。