消費税軽減税率対策補助金について

1.はじめに

平成31年10月より消費税率が10%に引き上げられることとなり、それに伴い軽減税率制度が導入される予定です。軽減税率が導入されると一定の生活必需品等とそれ以外の物品とで異なる税率が適用されることとなるため、事業者には複数の税率に対応可能なレジの導入や、受発注システムの改修などといった対策が求められています。しかしながら、このような設備の導入やシステムの改修には多大な費用がかかり、とりわけ 中小企業にとっては大きな負担 となります。
 そこで今回は、このような対策にかかる費用について補助を受けることのできる、 軽減税率対策補助金 についてご説明したいと思います。

2.軽減税率対策補助を受けることのできる事業者

この補助を受けることができる事業者は、以下の要件を満たす「 中小企業・小規模事業者 」とされています。

消費税軽減税率制度への対応が必要な事業者であること
財産処分制限期間の間、補助対象機器等を継続的に維持運用できる事業者であること
補助対象機器等について、軽減税率対策補助金事務局が行う調査に協力できること
日本国内で事業を行う個人又は法人であること
「風俗営業」、「性風俗関連特殊営業」及び「接客業務受託営業」を営む者でないこと
補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられていない者であること
反社会的勢力に該当せず、今後においても反社会的勢力との関係を持つ意思がないこと

 すなわち、軽減税率の対象となる商品を扱う国内の事業者で、導入した設備やシステムを継続して運用することのできる一定の要件を満たした者が補助を受けることができるということです。また「中小企業・小規模事業者」に該当するか否かの判定は、 各業種ごとに資本金もしくは出資金の額または従業員数 により行います。

業種 中小企業者 小規模事業者
資本金の額 従業員数 従業員数
製造業等 3億円以下 300人以下 20人以下
卸売業 1億円以下 100人以下 5人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下 5人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下 5人以下

ただし、発行済株式の総数又は出資価格の総額の1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業者または2/3を複数の大企業が所有している中小企業者など、大企業に所有されている事業者については、この「中小企業・小規模事業者」には該当しないので、注意が必要です。

3.【A型】複数税率対応レジの導入等支援

軽減税率対策補助金には「 A型 」と「 B型 」の二種類があります。
 A型は、複数税率に対応した新しいレジの導入や、すでに使用しているレジを複数税率に対応させるためにかかる費用の一部を補助する補助金です。「レジ・導入型(A-1型)」「レジ・改修型(A-2型)」「モバイルPOSレジシステム(A-3型)」「POSレジシステム(A-4型)」の4タイプに分かれており、それぞれ対象となる機器が異なります。
 基本的には導入・改修にかかる費用(リースによるものを含む)の 2/3 までが補助されます。ただし、導入機器一台当たりの補助金上限額が 20万円 と設定されており、実際にかかった一台当たりの費用の2/3相当額が20万円を超える場合には20万円だけが補助されることとなります。また、一事業者当たりの補助金上限額も設定されており、こちらは 一事業者当たり200万円 に設定されています。
 なお、ケースによって補助率が異なってくるため、利用するタイプと実際にかかる費用を確認しておくことが重要です。

補助率が2/3とならないケース

「レジ・導入型」を利用して
POS機能のないレジを導入する場合で、
その費用が3万円未満であるとき
補助率3/4
「モバイルPOSレジシステム」を利用して
タブレット端末等を購入する場合
又は
「POSレジシステム」を利用して
POS機能を有するソフトウェアを汎用端末にインストールする場合
補助率1/2

4.【B型】受発注システムの改修等支援

B型は、EDI/EOS等の電子的受発注に必須となる商品マスタや、発注・購買管理、受注管理機能のうち、複数税率対応に伴い必要となる改修・入替にかかる費用の一部を補助する補助金です。原則として既に取引先間でEDI/EOS等の電子的な受発注システムを利用している事業者のみが対象となりますが、取引先の要請等により新規にシステムを導入する場合にも補助を受けることができます。「受発注システム指定事業者改修型(B-1型)」「受発注システム自己導入型(B-2型)」の2タイプに分かれており、それぞれ申請の手順が異なります。

(1)申請の手順【B-1型】
 B-1型はシステムベンダー等に受発注システムの改修等を発注する場合に利用できるタイプで、改修・入替に着手する前の「交付申請」と改修・入替が完了した後の「完了報告」が必要です。専門知識を必要とするシステムの改修・入替のため、「指定事業者による代理申請制度」が導入されており、申請者に代わってシステムベンダー等の指定事業者が「交付申請」「完了報告」を行うこととなります。リース利用する際は、指定リース事業者を含めた三者で申請します。
 なお、事前申請を原則とするため、補助金の交付決定以前に契約および発注を行っていた場合、補助金は支払われません。

【B-2型】
 B-2型は登録されたパッケージ製品・サービスを中小企業・小規模事業者等が自ら導入する場合に利用でき、指定事業者による代理申請ではなく中小企業・小規模事業者等自身で申請を行うこととなります。この場合、本制度で登録されたパッケージ製品・サービスのみが補助対象となります。リース利用する際は指定リース事業者との共同申請をします。
 B-1型と異なり事後申請となるため、受発注システムの導入・支払いをすべて完了した後に、速やかに申請します。

(2)補助率及び補助金上限額

 A型と同様、基本的には改修・入替にかかる費用(リースによるものを含む)の 2/3 までが補助されます。ただし、 発注システムの場合には1,000万円  受注システムの場合には150万円  発注・受注システムの両方の場合には1,000万円 の補助金上限額が設定されており、実際にかかった費用の2/3相当額がこれを超える場合にはそれぞれの上限額だけが補助されることとなります。また、補助対象範囲外の機能を含むパッケージ製品・サービスについては、その初期購入費用の1/2を補助対象経費としてこれに2/3を乗じた額、つまりは全体の費用の1/3相当額が補助されることとなります。

6.軽減税率対策補助金申請の時期

この制度の補助対象期間は 平成28年3月29日から平成29年3月31日 で、この期間内に行った複数税率対応レジおよびレジシステムの導入又は改修が補助の対象となります。また、補助金交付申請受付期間は平成28年4月1日から平成29年5月31日で、補助対象期間内に行った導入・改修についてこの期間内に補助金申請書類の提出をしなければなりません。
 導入の場合は、購入および導入が補助対象期間内で完結している必要があります。例えば、導入日が平成28年3月29日以降であっても、購入日が平成28年3月28日以前であった場合には補助は受けられないこととなります。また、リースを利用する場合には、リースの契約日とリース開始日の両方が補助対象期間内に含まれている必要があり、どちらかが期間外となる場合には、補助の対象とはなりません。
 レジの導入・改修について契約をした後で補助が受けられないとなると、会社にとって大きな損失となりかねません。各ケースにおいて補助期間内に何を完結しておく必要があるかを把握することが大切です。

5.おわりに

今回は消費税の増税に伴う軽減税率対策補助金について述べさせていただきました。
もちろん、補助金制度を使うことには事務処理の増加や時間的な制約といった点も伴いますので、制度の活用には慎重な判断と計画性が必要となります。様々な点を考慮したうえで補助金を上手に活用すれば、設備の導入などで支出が多い期に返済不要の収入を得ることができるだけでなく、圧縮記帳などの規定により課税の繰り延べを図ることもできます。
 この軽減税率対策補助金以外にも活用できる補助金制度はあります。時代の変化や法律の度重なる改正の中で、こうした補助金制度に関して幅広い情報を得ておくことが必要といえるでしょう。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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