1.はじめに
固定資産管理は固定資産管理専用のソフトを使用している事業者が多いと思いますが、Excelファイル等を使用して手動で管理されている場合もあるかと思います。
固定資産管理において重要になる償却計算は複雑な為、Excelで手計算を行っている場合、ヒューマンエラーによるミスの発生可能性が高くなります。一方、固定資産管理専用ソフトを使用する場合、償却計算の正確性は高まりますが、ソフトで作成された固定資産台帳と会計帳簿の数値が整合していないケースがよく見受けられます。
今回はこうした難しさの付きまとう固定資産管理について、固定資産管理のメリットや実際の固定資産管理の流れについてご紹介していきたいと思います。
2.固定資産とは
そもそも固定資産には何が含まれるのかを確認します。固定資産には会計上、以下の3つの区分があります。
②無形固定資産
③投資その他の資産
①の「有形固定資産」には建物、土地、機械設備、什器、パソコン、社用車等の形のある資産が該当します。
②の「無形固定資産」にはソフトウェア(自社利用・販売目的含む)、営業権、特許権等の形のない資産が該当します。
リース資産の場合はそのリース対象が何かによって有形固定資産か無形固定資産かに分類されます。
③の「投資その他の資産」には投資有価証券、長期貸付金、関係会社株式、長期前払費用、繰延税金資産等が該当し、あまり馴染みのない事業者もあるかと思います。
投資その他の資産のうち長期前払費用は費用化していく過程で償却計算の管理をする必要がありますが、基本的に固定資産管理の対象は有形固定資産と無形固定資産になります。
3.固定資産管理のメリット
(i) 会計管理の適正化
有形固定資産は土地を除いて償却計算されるものがほとんどです。尚、償却計算とは、固定資産の価値を利用期間にわたって費用化していく処理です。
固定資産は一時に多額の投資(購入)をしたとしても、投資額はその会計期間の売上のみを期待したものではないことが多いはずです。投資額を利用期間で按分して費用化していくことで初めて、会社の売上と費用(減価償却費)を期間対応させることができます。
また、多額の固定資産を一括で費用化出来てしまうと、利益圧縮が可能となり、適切な納税も担保されないことから、税務上も適切な期間にわたり費用按分することで正確な納税額を算定が求められます。
(ii)固定資産税の適正化
建物や土地に固定資産税が課されますが、機械や装置等の固定資産にも償却資産税が課されます。固定資産管理を適切に行っていない場合、以前に購入した資産を使用していないのに保有し続け、償却資産税もそのまま払い続けていることもあります。そのため、使用されていない資産を把握・処分することで納税額を適正化することができます。ちなみにソフトウェア等の無形固定資産については償却資産税の対象外となります。
(iii)経費削減
(ⅱ)の固定資産税の適正化で触れた点と類似しますが、昨今増えているのが、ソフトウェア等のサービスを一度契約してその後自動更新され続けている、というケースです。サブスクのような買い切りでないソフトウェアを一時期は使用し、その後未使用になっていたり、似たようなサービスを重複して契約していたりという事も多くみられる事例です。こうした不要な支払いをしないためにも、固定資産管理の一環として整理することがおすすめです。
(iv)滅失の回避
固定資産の管理がされていないと、滅失・盗難にあっても気づけないことがあります。特に、償却が終わった資産などは管理を適切に行わないと、どうなっているか見えづらくなります。思わぬ事故を防ぐためにも適切な頻度で管理を行うことが必要です。
4.固定資産管理の流れ
ここからは、固定資産管理の一般的な流れをご紹介したいと思います。
①新規取得の登録
一般的に、会計処理や現物確認で必要となる以下の情報を稟議書や請求書に基づき固定資産台帳システムに登録する(システムを使用していない場合はExcelに記載する)。
・資産コード
・取得年月日
・事業供用年月日
・設置場所
・管理部門
・取得価額
・数量
・償却方法
・耐用年数
また、事業共用年月日と取得価額に基づき、会計システムにも取得の仕訳を入力する。
②取得時は固定資産ラベルを現物に貼付
該当の固定資産を識別するため固定資産台帳の資産コードを記載したラベルを貼付。
③除却・売却の登録
除却があった場合、稟議書等に基づき除却年月日を固定資産台帳システムに登録する。
除却までの償却計算を確認し、さらに除却に要した費用を加味した上で、会計上の除却損益(売却損益)を算定。会計システムにも仕訳を起票する。会計システムの登録は都度行う場合もあれば、決算整理仕訳として登録するケースもある。
④固定資産実査(棚卸)の実施
通常、年に1〜2回、固定資産台帳と実際の資産の状態を照合。
・不要になった資産が現場判断で勝手に処分されていないか
・把握していない新しい備品が購入されていないか
・遊休資産はないか
・壊れている等稼働できない資産はないか
固定資産台帳と実際の資産の状況の差異を調査の上、固定資産台帳システムに登録する(例:勝手に処分されていた資産等があれば除却の手続をふむ)。固定資産台帳と現物が整合するように処理する。
⑤減価償却計算を行う
システム上算出されている(又はExcelで算定した)減価償却費を会計システムにも起票し、最終的な残高が固定資産台帳と会計システムで一致していることを確認する。
固定資産台帳と会計システムで不一致が起きている場合、例えば固定資産の除却を会計システムにだけ起票して、固定資産台帳に反映し忘れている場合もあるため、各資料を確認し不一致の要因を把握する。
5.おわりに
今回は固定資産管理についてご紹介しました。固定資産の管理は、本業にまつわる管理と違い、社内的な管理の話なので後回しにされることも多いかと思います。また、固定資産の重要性も事業者によって異なりますが、多額の固定資産を保有している企業や、固定資産の出入りが激しい企業では固定資産管理を徹底することで無駄が排除できる可能性があります。本稿を参考に、自社の固定資産管理を見直してみてはいかがでしょうか。