1.はじめに
今年も年末調整の時期となりました。 本稿では、令和6年度の年末調整の改正点を中心にご説明します。
2.令和6年度の改正点の概要
まず、令和6年度の年末調整の改正点についてお伝えします。今年度の改正点は、以下の2点です。
① 年調減税額の控除(定額減税への対応)
令和6年6月から給与等に対して定額減税が実施されるようになりましたが、年末調整においても定額減税への対応が必要です。
令和6年6月2日以降に入社した従業員など月次減税が適用されていない方に対しては、年末調整時に定額減税額の控除(年調減税)を行う必要があります。また、令和6年7月以降に扶養親族が増加した場合、定額減税額の差額も清算が必要です。
定額減税の対象者や減税額、年末調整時の実務については後述します。
② 保険料控除申告書の簡略化
令和5年度の税制改正により、令和6年10月以降に提出される保険料控除申告書について、「保険金等の受取人」と「申告者との続柄」の記載欄が削除され、様式が簡略化されました。
3.定額減税の対象者・減税額
定額減税の対象者は、令和6年分の所得税の納税居住者であり、かつ所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下の方です。
また、減税額は以下の金額の合計となります。
② 対象者本人の同一生計配偶者または扶養親族1人(居住者に限る)につき3万円
ただし、給与・賞与計算時の源泉控除対象配偶者や扶養親族の範囲と、定額減税の対象となる範囲とは差異があるため、注意が必要です。源泉控除対象配偶者は、所得者の合計所得金額が900万円以下(給与収入のみの場合、年収1,095万円以下)で、かつ配偶者の所得が95万円以下(給与収入のみの場合、年収150万円以下)である方をいいます。一方で、定額減税額の計算の対象となる同一生計配偶者については、所得者本人の所得要件はありません。配偶者自身の所得が48万円以下(給与収入のみの場合、年収103万円以下)であって、所得者と生計を一にしているのであれば、対象になります。
また、扶養親族についても、給与・賞与計算時の源泉徴収の控除対象となる控除対象扶養親族は合計所得が48万円以下で、かつ16歳以上である方に限られますが、定額減税の対象として所得税の減額対象となる方については16歳未満の方も含まれます。
なお、控除対象配偶者や扶養親族については、非居住者であっても一定の要件を満たせば扶養親族に含まれることがありますが、定額減税の対象者は居住者のみであり、非居住者は含まれないことにも注意しましょう。
4.年調減税の実施
年末調整では、年間の所得税額から年調減税額を控除することにより清算を行います。
(1)年調減税の対象者
原則として、年末調整の対象者は年調減税の対象となります。ただし、上述の通り合計所得金額が1,805万円を超えることが見込まれる方や、令和6年5月31日以前に年の中途で年末調整の対象となる方は、年調減税の対象外となります。
(2)年調減税額の計算
年調減税額は、扶養控除等申告書、配偶者控除等申告書、または令和6年分年末調整に係る定額減税のための申告書を基に、年末調整時の同一生計配偶者及び扶養親族の人数を確認し計算します。
年調減税は、原則として令和6年12月31日時点の状況で判定します。月次減税は6月1日時点の状況に基づき減税額を計算しますが、年末までに子供が生まれて扶養親族が増加した場合などは、その人数を年調減税額の計算に含めることができます。一方、年末調整までに同一生計配偶者・扶養親族が非居住者となった場合や、所得要件を満たさなくなった場合は、年調減税額の計算に含めることはできません。
(3)年調減税額の控除
年調減税額は、住宅借入金等特別控除後の所得税額(年調所得税額)を限度として、年調所得税額から控除します。その後、102.1%を乗じて復興所得税を含めた年調年税額を算出し、過不足額の計算を実施します。
4.おわりに
令和6年度は定額減税の実施に伴い、毎月の給与や賞与計算、年末調整が煩雑になり、給与計算担当者の方々は大変な思いをされているかと思います。年末調整において混乱が生じることも予想されますが、税理士や社会保険労務士等の専門家の力を借りながら、無事に乗り切っていただければと思います。