令和7年税制改正大綱の解説① ~法人税、資産課税~

令和7年税制改正大綱の解説① ~法人税、資産課税~

1.はじめに

 令和7年度の税制改正大綱が発表されました。今年は「年収103万円の壁」や退職所得にかかる所得税、高校生等の所得税控除など、私たちの生活に大きな影響を与える税制に関する議論が注目されていました。一方で、法人税や消費税に関しては大きなインパクトのある税制改正はありませんでした。

 今回から2回にわたり、令和7年度の税制改正について解説していきます。第1回目となる今回は、法人税と資産課税について、皆さんの関心が高いと思われるポイントを中心に説明します。

2.法人税~中小企業等に対する軽減税率の延長~

 中小法人に対する法人税は、本則で基本税率が19%とされていますが、特例措置により、800万円までの所得については15%の軽減税率が適用されていました。この措置が以下の見直しを追加した上で、2年間延長されます。元々はリーマンショック時の講じられた時限措置でしたが、賃上げや物価高に対する状況を踏まえて延長されました。

1. 所得の金額が年10億円を超える事業年度について、所得の金額の内、年800万円以下の金額に適用される税率が15%から17%へ引き上げ

2. グループ通算制度の適用をしている法人は特例の適用除外

3.法人税 ~防衛特別法人税~

 安全保障の観点から日本の防衛力の抜本的な強化を目的として、たばこ税が増税されますが、それと併せて安定的な財源確保のために新たに創設される法人税が「防衛特別法人税(仮称)」です。計算方法は以下の通りです。適用時期は令和8年4月1日以後に開始する事業年度からとなっています。

{(基準法人税額※1-500万円)×4%}-税額控除※2 = 防衛特別法人税額

※1 基準法人税額…以下の制度適用前の法人税額
・ 所得税額の控除
・ 外国税額の控除
・ 分配時調整外国税相当額の控除
・ 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除
・ 戦略分野国内生産促進税制のうち特定産業競争力基盤強化商品に係る措置の税額控除及び同措置に係る通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額の加算
・ 控除対象所得税額等相当額の控除
※2 以下の税額控除
・ 外国税額の控除
・ 分配時調整外国税相当額の控除
・ 控除対象所得税額等相当額の控除
・ 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除

4.法人税 ~リース会計基準に関連する税制~

 令和6年9月13日に「リース取引に関する会計基準」等(以下、「新リース会計基準」)が公表されたことで、財務会計上はオフバランス処理していたオペレーティング・リース取引についてもオンバランス処理が求められることになりました。これは2027年4月以降開始の事業年度より適用予定です。一方、法人税法上はこの変更に合わせた大きな改正は行われないため、財務会計と税務会計との乖離が生じることになります。

改正前 改正後
財務会計 税務会計 財務会計 税務会計
ファイナンス・リース オンバランス処理(資産負債計上あり) 売買処理(資産負債計上あり) オンバランス処理(資産負債計上あり) 売買処理(資産負債計上あり)
オペレーティング・リース オフバランス処理(資産負債計上なし) 賃貸借処理(資産負債計上なし) オンバランス処理(資産負債計上あり) 賃貸借処理(資産負債計上なし)

 ファイナンス・リースについては引き続き差異がない状態ですが(グレー文字)、オペレーティングリースは財務会計上はオンバランス処理に変更になったが税務上は賃貸借処理のままのため(赤字)、差異が生じることになり税務調整が必要になります。

5.資産課税 ~事業承継税制に関する特例措置~

 事業承継にかかる税制度の適用期限は個人版が令和10年12月末、法人版(特例措置)が令和9年12月末となっています。物価高等の急激な経営環境により事業承継の準備が間に合わない事業者もいるため、より円滑な承継を促すため今回の改正では適用要件が以下の通り緩和されました。

改正前 改正後
個人版 贈与の日まで引き続き3年以上特定事業用資産に係る事業に従事していること 贈与の直前において特定事業用資産に係る事業に従事していること
法人版
(特例措置)
贈与の日まで引き続き3年以上特例認定贈与承継会社の役員等であること 贈与の直前において特例認定贈与承継会社の役員等であること

6.資産課税 ~結婚・子育て資金の一括贈与の贈与税非課税措置の延長~

 直系尊属からの結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置については、少子化の要因の1つである経済的要因の軽減を目的として創設されましたが、その適用期限が以下のとおり2年間延長されることとなりました。

(改正前)令和7年3月31日まで→(改正後)令和9年3月31日まで

7.おわりに

 今回は法人税と資産課税について解説しました。法人税では、「防衛特別法人税(仮称)」が創設されましたが、それ以外は資産課税を含めても大規模な改正はなくほとんどが延長や見直しのため、会社の業績や業務に大きな影響を及ぼすものはないかと考えられます。「防衛特別法人税(仮称)」については令和8年4月1日より適用予定とされていますので対応準備を進めてください。

 次回は所得税について解説していきたいと思います。

著者近影
執筆者
RSM汐留パートナーズ税理士法人
パートナー 税理士
長谷川 祐哉

埼玉大学経済学部卒業。2015年税理士登録。
上場企業やIPO準備会社に対して、連結納税支援、原価計算・管理会計導入支援、会計ソフト導入支援などの高度なコンサルティングサービスを提供している。国税三法と呼ばれる所得税、法人税、相続税の3つの税務に精通。

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